
この記事では理容師の未来は実は明るい、ということを明らかにしたい。とはいえ、そんなわけないだろう?とあなたは首をかしげるかもしれない。そこで、現在を振り返り、そしてゆっくりと未来を紐解いていこう。
コロナに巻き込まれた経済と理美容
2020年4月、総理大臣の呼びかけにより日本は初めての非常事態宣言を経験した。理容師である私たちも当然、休業要請の対象になると思っていたが国の意向により休業要請からは外されていた。
幸いなことに理容師には消毒の知識があった。それも学校で教わっただけの知識ではない。カミソリを扱うということもあり、エタノールの濃度管理や次亜塩素酸ナトリウムの基礎知識などをお客さんに必要とされるための勉強として講習などに通い、理解している理容師も多かった。
しかし、国が人に外出をしないように呼び掛けている異常事態。当然、お客様は来なかった。東京都の西側に7店舗あるペピーズグループの理容師達の元にも来店してくれるお客さんは激減していた。
2020年3月 10%ダウン
2020年4月 40%ダウン
このまま続いたらどうなるんだ?
日本中の人が思ったことを理容師達も思っていた。
2020年5月、緊急事態宣言が延長された。お店を取り巻く環境としてはとても厳しい。周りを見回すと、例えば、飲食店業界。実際に、閉店してしまう店がかなりの数ある。
当たり前だが、理容には関係ない、ということはない。これではこれから理容師になろうと思う学生は不安であろう。しかし、最初に伝えた通り、実は理容師のこれからは明るい道が間違いなくあるのだ。
50年前の美容師数と理容師数
すこし堅苦しいと思うだろうが、数字で振り返ると未来が見える。だから付き合ってほしいと思います。

1970年のデータを見ると、理容師数25万人、美容師数21万人です。
驚く人も多いとは思いますがこのような数字があります。大きな理由は理容師のほとんどが男性。美容師のほとんどが女性だったため。女性美容師の中の多くは家庭に入り美容師をやめる女性が多かった。
そして、美容師はパーマ屋さんと呼ばれてました。女性が家を出ておしゃれを楽しむ場所として贅沢をしに行くところ。理容師は散髪屋や床屋さんと言われてました。当時の男性社会の常識が耳を出して清潔にしていないと社会人・大人として認められない、そんな風潮があったのです。清潔にしていないと社会に認められないから男性はこまめに理容室に通いなければいけない。そのような場所としての理容室が存在していた。
このような世の中の需要に対しての供給として理容師の方が必要とされていた時代だった。
取り合い奪われ続けた理美容業界
それから時が経ち、男性もヘアスタイルを伸ばす時代がやってきた。日常的な理容室、非日常空間を演出する美容室。流行りのスタイルを求める男性が増えるにあたり、美容室を選択する男性が多くなっていく。
このあたりから美容師数が理容師数を超えていき引き離していった。さらに同業者から理美容両方の一番の得意分野が奪われていった。カテゴリーキラーと呼ばれた低価格理美容店です。
一番売れる「髪を切る」という重要な部分だけに特化して作られた低価格理美容店。のちに、社会に定着し低価格理美容室ではなくカット専門店と呼ばれ伸びていき、理美容業界の3割のシェアを奪うほどになりました。
とはいえ、カット専門店で働く理美容師はシェアを奪ったとはいえ同業者。同じ国家資格を同じ学校で学んだ人達でした。しかしここで他業種に理美容業界は様々な「売り」を奪われていく。
エステ業界からはエステ。メイク業界からはメイク。ドラッグストア業界からは自宅でのヘアカラー。ヘッドスパ業界からはヘッドスパ。薄毛対策業界からはスキャルプケア。
そんな具合だった。
取り返し戦略としてのトータル化
このまま他業種にまで自分たちの「売り」を奪われ続けてはたまらない。かといって今のお客様達もいる。そこで美容室はトータルビューティーへと乗り出し、エステ・メイク・ヘッドスパ・岩盤浴などを含めた美を追求して行った。
理容室は二つの流れを作り出して行った。
一つは、育毛メニューやボディケアを取り込んだ男性がくつろげるリラクゼーションサロン。そしてもう一つは、理容師・美容師の枠にとらわれずに男性も女性もエステもメイクもヘッドスパも取り入れていく、いわゆるユニセックスサロン[現在の言い方だとジェンダーレスサロン]
このような流れの中、理容師・美容師はそれぞれ生き残りをかけて変化していった。
美容師数の増大、理容師の高齢化
そのような歴史の先に理美容師の人数のバランスの変化が顕著になってきた。

前述のとおり、1970年には理容師数25万人、美容師数21万人でした。それが、2000年には、理容師数25万人[高齢化割合高い]、美容師数35万人に。そして、2019年では、理容師数22万人[店舗数12万件][超高齢化]、美容師数53万人[店舗数25万件]となりました。
まず一番目に付くのは美容師数です。たった19年間で1.5倍に増加しているということ。しかし2000年から2019年の間で世の中のお客さんが美容室に支払った金額が1.5倍に増加しているかというと、多少高くなった気もするが1.5倍とは程遠い。
美容師の女性割合は低くはなったものの、それでもおよそ半分は女性美容師。女性が家庭に入り仕事を辞めることが多かった1970年とは違い、両親共働きが当たり前の時代になってきているとは言っても、やはり一定数の女性美容師は家庭に入り美容師を辞めていく人はいる。それなのに美容師数は1.5倍に増加している。
価格が上がっていない。美容室で髪を切る人は増えてはいない。そのような需要の中、供給である美容師数が1.5倍に増加するということは、収入が3分の1程度に落ちていることがわかる。
次に気になるのが、理容師数。50年で25万人から22万人と3万人減少している。ここ数十年、理容師に新しくなる人は徐々に減っていき最近やっと下げ止まったぐらいです。
美容師が増加している中、新しく理容師になる人は減少して行っている。新しく美容師と理容師になる割合は20:1です。新しい理容師はたいして入らないのに全体理容師数はたいして減っていない。
ここで気にしてほしいところが理容師の「高齢化」です。2019年理容師数22万人[店舗数12万件][超高齢化]。この店舗数のほとんどが65歳を超えた理容師の理容店であるということ。
高齢化している理容室が悲惨であるかというとそうでもない。ベテラン理容師は客層のほとんどが同じ理容室に長く通い続ける男性というのもあり、さらにほとんどがローンの払い終わった自宅兼店舗で、若い時からの付き合いの長年のお客さんに囲まれている。良かった時代の時ほどの年収はない。しかしテナント費用や材料費などの出ていくお金も少ないから無理して若い客をやらないでも、長年通ってくれているお客さん達との信頼さえ大切にすれば、悠々自適な生活を送っている。
美容師も高齢化は進んではいるが、理容師の高齢化とは比べ物にならないぐらいの年齢差があります。では
比較的若い理容師はどうしているのでしょう?
専門店化しやすかった理容師
昭和の時代。魚屋さん八百屋さんからスーパー。高級品はみんな駅前の有名デパート。
そして平成の時代。百貨店からショッピングモールという専門店の集合体。量販店から徐々にネット通販へ。
さらに令和時代の今後。物はネット通販。食品は宅配とスーパーの併用。
ところが理美容室は相変わらず店舗に通うところは変わっていない。19年で1.5倍に増加している美容室はトータルビューティーから「〇〇が得意な美容室」という専門店に変化していく。例えば、
イルミナカラーが得意な美容室
癒し系美容室
縮毛矯正専門店
個室美容室
カラー専門店
ヘッドスパ専門店
ドライスパ専門店
等々.。
19年間で1.5倍に増加した美容師は、世の中のギリギリの隙間を狙って様々な専門ショップを時には髪を切ることを捨ててでも作っていった。
そして、その様子をみていた若い理容師達。理容師は1.5倍に増加していない。しかもほとんどが65歳以上。若い理容師数は非常に少ないが社会に取り残された結果、「勝手に特化された技術」を持っていた。
しかもその特化された技術は、あとから真似しようとしても容易には真似できない技術だったのです。
そのことに気づいた30代40代の若手理容室経営者は、やればやるほどお客さんは増え続けた。気を付けていたことは数点だけ。
・客層を広げずに男性だけに絞ること
・理容師しかできない技術を改良して世の中に合わせた技術にすること
たったこれだけで、世の中が勝手に価値を高く評価してくれました。現に30歳の私が母親と2人でやっていた小さなヘアーサロンイケノは、株式会社ペピーズとなり、わずか12年間で年間売上が30倍に増加しています。
2020年コロナ禍の中での理容師
国が人に外出をしないように呼び掛けている異常事態。東京都の西側に7店舗あるペピーズグループの理容師達の元にも
来店してくれるお客さんは激減していた。
2020年3月 前年より10%ダウン
2020年4月 前年より40%ダウン
2020年5月 前年より20%アップ[緊急事態宣言延長期間]
2020年6月 前年より8%アップ
ん?結果として、2019年11月から2020年10月の一年間でコロナ禍の中、年間で13%お客さんが増えました。
なぜこのような結果になったのか。他の多くの理容室経営者にも聞いたが、多少の違いはあるが大体がコロナ禍をうまく乗り切れたようだ。多くの経営者に今回の理由はなぜだと思うのかを聞いて回りました。
集めてきた内容ですがその理由です。
大きな理由その1【男性のお客さんは女性に比べて戻りが速かった】
女性は緊急事態となると美しく着飾ることは悪と感じ世の中が混乱すると怖いと感じ動かなくなる。が、男性は年齢や職業にもよるが情報を集めて客観的に分析して判断する職に就いている場合が多い。冷静に判断して理容室は比較的安全と考え来店していた。
理由その2【理容師の衛生への信頼度が高かった】
もともとカミソリを使用する理容師。衛生に関してはそれなりの知識を持っていた。あまりやっていないところもあるが
多くのお客さんを集めている理容師は勉強していて、徹底的な対策を行っている所が多かった。そして徹底的にやっているところほどお客さんの戻りは早かった。
理由その3【人気があったから】
いつも通っていた理美容室に行きたいが生活様式の変化によりいつもの理美容室に通うことが難しくなった人達が多くいた。その人達はそれぞれの住んでいるエリアの中で新しいお店を探し出した。探し出した人達は当然人気のお店や衛生対策を徹底している所に集まる。
普段の理容室は男性専用として人気があり、いつもスタッフが足りずにお店は予約一杯な状態。いつも予約一杯だから
急に行こうとしても初めての人は予約のタイミングもわからなく、入れないと思いあきらめてしまう。
しかし今はコロナの影響で予約に空きがあり入りやすくなっているため、新しく通うところを探していた人達と合致した。だから5月の新規客は増大した。
質問を投げかけると理容師も理容室経営者も最後に言うことは一緒でした。
「理容師でよかった」
2021年、これからの理容師
理容師を雇用している理容室経営者達はいつも言う。「お客さんはいる」でも「理容師がいない」。
ここまでの文章を読んでくれたあなたは気づいていると思います。世の中は需要と供給でできています。増えすぎると価値はさがります。
【価値の高い希少な存在=必要とされる】
誰でもできる事は最初の頃は良くてもいずれ価値は下がります。
【真似されない売り=必要とされる】
男性は同じお店に通い続ける割合が高い。
【男性に特化する=必要とされ続ける】
以上のことを考えると2020年以降の理容師の未来は明るいと強く感じています。きっとあなたもおなじように思えるだろう。そう、理容師を目指しているあなたの未来は明るいのです。
とはいえ、どのようなお店を選ぶかで、あなたの成長の路線が決まるも必然です。そこで
【長く働ける店を見抜く方法】退職者が多い理美容室の原因と対策
をご覧いただき、あなたの未来設計図を描くヒントにしてくださいね。
初めまして 東理同組教育部講師会の小島と申します。
今回の池野先生の記事がとても励みになりました。
そこでお願いなのですが、私の所属支部(江戸川支部)の新聞に、この記事を載せさせて頂けないでしょうか?
新聞は江戸川支部員限定のものです。
ご検討頂けたら幸いに存じます。
小島先生恐縮です
自分も多摩立川支部の教育部です
業界のためになるなら
是非ともお使いください^_^
ありがとうございます
ありがとうござます。
掲載を許して頂き感謝致します。
また素敵な記事を楽しみしています((^-^)