新時代の女性バーバーの働き方・生き方

理容業という男性社会のビジネスにおいて女性がクリエイティビティを発揮し、新時代の価値を創出する時代。
これからの女性バーバーに必要な知識やスキル、環境とは何か。実際に現場で活躍する彼女たちのリアルな声からのヒントを探る。

Q1 先ず男性が多い理容業界に入ろうと思ったきっかけは?


私はもともと美容師志望で願書を専門学校に提出しました。受理してくださった先生が理容科の先生で「理容科にこないか?」と口説かれ、その場で願書を書き直し理容科に入学しました。男性が多いというか理容業界自体よく分かってないままこの世界に入ってきたので、男性が多い職種なんだなと知ったのはだいぶ後でした。職業を選ぶときに男性が多いとか女性が少ないとか、そういうことを全く気にしてなかったんだと思います。入学したら理容科は1・2年生合わせて4人。うち3人が女性だったせいもあって、尚更気づかなかったんでしょうね。

Q2 最近はSNSもビジネスに欠かせないツールだと思いますが、どんな活用をされていますか?
私はこんな時代にSNSにあまり力をいれていません。かなり時代遅れだと思います。コロナの影響もあり「やっぱりSNSに力をいれておけばよかった」と思う反面、私たちがお客様に提供できるサービスの価値についても再認識しました。自粛期間中、わたしたちのサロンいち早く感染者予防対策を整備し、やりすぎなくらいの衛生管理をして営業を続けていました。あの時お客様からは感謝のお言葉をたくさん頂きました。昨今はSNSを通じて様々なサービスを提供できるようになりましたが、鬱々としたあの自粛期間中に少しでもお客様に癒しを提供できたのは、やっぱり私たちのような対面での接客を行う理容師だったと思います。直接お会いして、サービスを提供し、お代を頂く。これが一番大事なんだなと思います。SNSは頑張っているけど、いらっしゃってくださったお客様に良いサービスを提供できければやっぱりそれは残念なことだし。まず目の前にいるお客様に自分の持っている技術を最大限提供できるようにしようと伝えてます。はい、すいません。ほとんど言い訳ですね(笑)自己アピール、宣伝、集客、求人。さまざまな方面に役立つSNSは絶対やるべきですよね。

Q3 女性は男性に比べ出世しにくいと言われていますが、新しい男女平等の形は?
この業界で働いて10 年になりますが、私は自分が男性より出世しにくいと感じたことがありません。今理容師は年々減少。その中でも女性となるとどこからも引く手あまたなのではないでしょうか。むしろ有利とすら感じます。わたしが入社した当時の店舗の店長は女性。その次の店長も女性。そして系列の別の店舗の店長も女性でした。会社の幹部も社長以外は、私を含め女性という配置。女性の威力の方が強いのかな?と感じさせますよね。逆に男性陣から「不平等だ!」なんて声が聞こえてきそうなくらい(笑)でもそれも1度も聞いたことがありません。先程も話しましたが学生時代からたくさんの女性理容師に囲まれていて、会社でも女性かバリバリ仕事をし、出世していくことは本当に普通で、やはりこれは代表池野の努力が心配りがあると思います。会社の中で重要なポジションを任せる時、女性だと結婚や出産で長期の休み・退社してしまう可能性があると危ぶまれると思います。もしそうだったとしても、実力があれば任せる。たとえどんなに短い期間になってしまったとしても、平等にチャンスをくれる。私もありますが、やはり「女性だから選ばれない」経験をしたことある方っていらっしゃると思うんです。そういう性別で判断されないとても恵まれた環境でお仕事をさせてもらっています。難しいことかもしれませんが、何か決断をする時に「男性だから」「女性だから」と区別されないことが大切だと思います。

Q4 労働人口、そして理容師の減少で、女性の戦力化が必須になる現在、理容という中での女性の働きやすさとは?労働時間や環境等
私が今の会社を選んだ理由のひとつは女性スタッフがたくさんいて、お店もとてもかわいらしかったから。そんな単純な理由ですが、女性スタッフがいるというのは、安心につながります。やっぱり女性ならではの悩みや事情など色々ありますから、そういうことを相談できる先輩がいるというのは、心強いし働きやすくなるのかなと思います。

Q5 理容師という男性社会のビジネスにおいて女性がクリエイティビティを発揮しやすくするには?
Q3でも答えましたが、女性だからと区別したり特別扱いもしないことかなと思います。私の会社は男女の関係だけでなく、先輩後輩や経験年数でも区別されません。経験年数が少なくても技術とガッツがあれば3年目でも店長を任せられることもありますし、マネージャー業をこなしているママさんスタッフもいます。男女に限らず、色々な制約を気にしないでスタッフが思いきりハジけられる環境があるかどうかでしょうか。そしてそれを見守ってくれる人がいるか・・・。代表池野は良い意味で放任主義。スタッフが新しいことに取り組みたいと言うと大体OK。「とくかくやってみなよ」と。後は本当にノータッチ(笑)やっている姿を遠くの方で見守っていて、ちょっと雲行きがあやしくなるとそっと手助けしてくれる。信頼して任せてくれているでしょうね。やはり「女性だから」「1年目なのに」「10年目なのに」という認識や意識があるだけで、その制約を気にしてちょっと控えめになったり、守りにはいったりしますよね。そういうのを感じさせない環境があると「もっと自分をアピールしてみようかな?」と欲が出てきたりすると思います。

Q6 出産後の仕事継続が容易になるには?
うちにはたくさんのママさんスタッフが働いています。やっぱり彼女たちと話すとママさんが復帰して働いているというモデルケースがあると、出産後の仕事継続のイメージがつきやすようです。そしてママさんたちが復帰するタイミングで彼女たちとミーティングし、どう働きたいか決めてもらってます。産休前のようにバリバリ働きたいスタッフもいれば、時間の制約もあるし裏方に徹したいというスタッフもいます。これを機に新しいことを始めたいというスタッフもいますので、好きなように選んでもらってます。実際に誰一人として同じ業務をしているスタッフはいませんし、みんなそれぞれ違う方面から会社の役に立ってくれています。選択肢が多いと自由度が上がり、各々が自分たちで調整。急に帰宅を要する場合でも臨機応変に対応できたり、ちょっと多めに働こうと思えば、それもできる。
あとはママさんたちの心の負担を減らしてあげることでしょうか。どうしても急に帰らなくてはいけなかったり、お休みをを余儀なくされる場合がありますよね。そういうことがあると常々「申し訳ない」「迷惑をかけてしまう」という気持ちになってしまう。だけど、私たちは彼女たちを最初から人数にカウントせず+1感覚なので、急な帰宅やお休みするようなことがあったとしても、お客様に迷惑かからないような予約管理や常務の振り分けをしています。彼女たちが好きなように働いてくれるなら、それだけで十分。戻ってきてくれるだけで万々歳なんだと伝えています。

Q7 モラハラ、セクハラにどう対応?
会社ではそういうことは一切ないですが、接客中にはちょっとセクハラ紛いなことはありますよね。若い頃はただヘラヘラ笑うくらいしか出来ませんでしたが、そんなこんなしてると社長がすっ飛んできて常連のお客様でも本気で注意する。女性を守るヒーロー的な(笑)やっぱり当時の私は”お客様は神様”的感覚だったので、そんなことは出来ないと思っていたのですが、いつからかピシャッと制することができるようになりました。そういうことが起きた場合、当事者のスタッフだけじゃなく周りにいるスタッフやお客様まで不快な思いにさせてしまいます。またそういう女性をアピールしているお店なんだと勘違いさせてしまう。女性スタッフにも、お客様を勘違いさせつような態度は絶対にとらないようにと教えられます。社長は男女差別もしませんが、女性を売り物に接客や仕事をすることを絶対に許しません。それでお客様を付けようとすると、必ず将来大変なことになるからです。社長はそういうこともしっかりと伝えてくれ、凛とした立ち振る舞いができる女性になることが必要だと教えてくれました。

Q8 私に次回もお願いしたいと思わせるには?ファンの増やし方
若かりし頃はとにかく明るく元気にやっていれば自然とお客様がついてくれたものですが、10 年目となるとそうはいかなくなってきます。そういったこともあり全く違うところからのアピールも必要かなと思い意識しているのは人間の五感へのアプローチです。その中でも特に、触覚、聴覚、嗅覚を意識しています。昨今の現代人はスマホなどで四六時中情報が注ぎ込まれて、脳は疲労困憊。五感も鈍るそうです。そうするとイライラしやすくなったり、体調の変化や不調に気づけなかったりするそうです。聴覚ではお客様と話すときの声の音量やトーン、速度や話の合間など。嗅覚では、その日の体調でアロマの香りを選んでもらい少しでもリラックスできるように。そして私たち理容師は美容師さんと違い、接客を通してお客様の顔や肩など頭以外にも触れます。特にわかりやすいのはシェービング。やはり男性がするシェービングと女性のするシェービングは、”触覚”に歴然の差が出ると思います。お顔に触れる圧や指の滑らかさ、手を離すタイミングや速度まで。爪切りは絶対使わないですし、ネイルもしません。同業者の方から「本当にシャンプーしてるの?」と聞かれるほど、手は綺麗に保っています。とてもデリケートな箇所だからこそ、女性らしい繊細さを活かせると思い、ここはまだまだ探求中。「なんか分からないど、なんか落ち着くよな〜。」というポジションを狙っています。やっぱり現代人に必要なのは癒しなのかなと思います。自分はカットが格段上手いわけでも特別センスが良い訳でもありませんから、こういう違う角度からアプローチをしています。

Q9女性理容師が増える為の「改革」とは?
やはりそうは言っても今女性理容師が少ないことは確かです。女性が少ないからこそ、女性か活躍したらビックニュースになります。同じことを成し遂げるでも男性よりも注目されるはず。でもやっぱり数が少ないからこそ目立ちにくい。今回の企画のようにもっと世の中にアピールできたら良いですよね。どうしても10 年も同じ仕事を続けていると、自分たちが当たりだと思っている女性理容師の良さが、他の人からすれば素晴らしいことかもしれないですよね。まず理容師という仕事の良さを丁寧に伝えていくとこからかなと思います。

Q10 自分の未来は?
こうは言っても自分は「女性だからできない」ばかり言っている人間でした。結婚出産の可能性を考えると身動きが取りづらくなって、自分の可能性もどんどん狭まっていきました。選択肢はどんどんなくなり、わずかに残された中からあんまりやりたくないけど、それを選ぶしかない。みたいな。ずっと憧れていた自分のサロンを持つという夢も30手前になって、不安や大きくなりブレブレに。「本当はやりたいけど、女性ということで不安や心配事が多すぎる」という赤裸々な思いをそのまま社長にぶつけました。自信をなくしている時社長に相談すると返ってくる答えは大体同じなのですが、今回もいつも通り「やってみれば良いじゃん」とのこと。女性だからできないことを数えるより、どうやったら一連の女性のイベントごとも通過していきながら、それを実現できるか?を一緒に考えてくれました。女性だからと諦めることより、どうやったらそれを活かせるか?を考えることが多くなりました。今の夢は女性がオーナーのメンズオンリーヘアサロンを作ることです。女性だからできる繊細な仕事や細やかな気遣いを武器にして、女性スタッフもたくさん集めたいです。うちのお店にいる若い女性スタッフの育成にも奮闘したいと思います。